ITストラテジスト試験、令和8年度からCBT方式へ ― 変わること・変わらないこと

令和8年度からITストラテジスト試験を含む高度試験がCBT方式に移行します。試験時期や申込の変化点と、受験者・IT部門が今から取るべき対策をわかりやすく整理しました。

「今年こそITストラテジスト試験に挑戦しよう」と考えていた方に、まず知っておいてほしいニュースがあります。令和8年度(2026年度)から、ITストラテジスト試験を含む高度試験・応用情報技術者試験・情報処理安全確保支援士試験が、紙の筆記方式からCBT(Computer Based Testing)方式へと移行します。試験そのものの位置づけは変わりませんが、実施時期や申込の流れは大きく変わります。皆さん、この制度変更をどこまで把握していますか?

IT部門の意思決定者にとって、ITストラテジスト試験は単なる個人の資格取得にとどまらず、部下や後進の育成計画、社内の資格奨励制度にも関わるテーマです。今回は最新情報を整理しながら、組織として何を準備すべきかを考えてみます。

何が変わるのか:CBT化と試験時期の再編

最大の変更点は、実施方式がCBTになることです。全国のテストセンターに設置されたパソコンで受験する形式となり、従来のように会場に一斉集合して紙の問題冊子とマークシートに向き合うスタイルは終わりを迎えます。

あわせて、試験時期の呼び方と実施時期も変わります。これまで「春期」として4月に実施していた区分は「前期」として2026年11月ごろに、「秋期」として実施していた区分は「後期」として2027年2月ごろに、それぞれ実施される予定です。ITストラテジスト試験はこれまで春期のみの実施でしたが、前期区分として11月ごろに実施される見込みです。受験を考えている方は、これまでの「春に向けて勉強する」という感覚から、スケジュール感を丸ごと組み直す必要があります。

また、CBT方式では受験者ごとに試験日や会場をある程度選べる柔軟性が期待される一方、テストセンターの座席数には限りがあるため、申込開始後は早めの手続きが安全です。身体上の理由などでCBT受験が難しい方向けには、従来型の筆記による特別措置試験も用意される予定です。

変わらない点:試験区分・出題形式・レベル感

制度変更というと大掛かりな印象を受けますが、試験区分そのものの再編や、出題形式・出題数・試験時間の変更は今のところ予定されていません。ITストラテジスト試験の午前I・午前II・午後Iの多肢選択式や記述式、午後IIの論述式といった構成は維持される見通しです。つまり、これまで積み上げてきた過去問演習や論文対策の学習資産は、そのまま次の試験にも活かせるということです。変わるのは「いつ」「どこで」受けるかであり、「何を」問われるかではない、と整理しておくと混乱が少なくて済みます。

IT部門・受験者が今からできる備え

この制度変更のタイミングは、企業のDXが「実験段階」から「実戦段階」へと移りつつある時期とも重なります。生成AIは指示待ちのツールから、自律的にタスクをこなす「AIエージェント」へと進化しつつあり、2026年内にエージェント型AIの展開を計画する企業は世界的に増えているという調査もあります。現場への実装が加速するほど、技術動向を経営戦略や業務改革に翻訳できる人材の重要性は増していきます。まさにITストラテジストが担ってきた役割そのものであり、試験制度が変わる今だからこそ、単に手続きを追いかけるだけでなく、自社のDX推進体制の中でITストラテジスト人材をどう位置づけ、どう増やしていくかを合わせて考えたいところです。

まず個人としては、令和8年度の申込スケジュールをIPA公式サイトで定期的に確認し、前期試験(11月ごろ)に向けた学習計画を早めに引き直すことが重要です。特に論述式の答案作成は付け焼き刃では対応しづらいため、業務で実際に手がけたDXプロジェクトや構想策定の経験を、いつでも論文のネタとして言語化できるよう整理しておくと良いでしょう。

組織側の視点では、資格取得支援制度の年間スケジュールを試験制度の変更に合わせて見直す好機です。春に合わせていた社内勉強会や受験費用補助の申請時期を、11月実施を前提に前倒しする必要が出てきます。人材育成計画とIT戦略の両輪でITストラテジスト有資格者を増やしていきたい企業ほど、この制度変更を「面倒な事務変更」で終わらせず、育成カレンダー全体を点検するきっかけにしてはどうでしょうか。

DXを推進する上で、技術だけでなく経営とITをつなぐ人材の存在は欠かせません。ITストラテジスト試験は、その橋渡し役としての知識と論理的思考力を客観的に示す数少ない指標です。制度変更という節目を、個人のキャリア設計と組織の人材戦略を同時に見直す機会として活用していただければと思います。

まとめ

令和8年度からのCBT化により、ITストラテジスト試験は実施時期が春から前期(11月ごろ)へと移り、受験方式も紙からパソコンへと変わります。一方で試験区分や出題形式、レベル感といった本質的な部分は維持される見込みです。変化点を正確に押さえ、学習計画と社内の育成計画を早めに組み直すことが、来る前期試験への最短の備えとなるはずです。