ITストラテジスト試験、2026年度からCBT化へ ― 制度変更に見る、IT人材育成の転換点

2026年度からITストラテジスト試験がCBT化。出題方式・実施時期の変更と経産省のDX推進指標改訂を手がかりに、IT人材と組織の評価のあり方に起きている転換をITストラテジストの視点で読み解く。

2026年度から、応用情報技術者試験・高度試験(ITストラテジスト試験を含む)・情報処理安全確保支援士試験が、紙の答案用紙からCBT(Computer Based Testing)方式へと移行します。試験区分の呼び方も「午前試験」「午後試験」から「科目A試験」「科目B試験」へと変わり、実施時期は従来の春期・秋期という年2回の固定日程から、一定期間内に用意された複数日から自分で選んで予約する方式へと再編されます。皆さん、この変更を「単なる試験制度の事務的な見直し」として読み飛ばしていないでしょうか。実はこの制度変更には、これからの企業がIT人材をどう育成し、どう評価していくべきかについての重要な示唆が詰まっています。本稿では制度変更の中身を整理したうえで、ITストラテジストや情報システム部門の責任者が、この動きから何を汲み取るべきかを考えます。

何が変わるのか―CBT化の概要

IPA(情報処理推進機構)の発表によれば、従来春期に実施していた試験区分は「前期試験」として2026年11月頃、従来秋期に実施していた試験区分は「後期試験」として2027年2月頃に実施される予定です。名称についても、これまでの「午前Ⅰ・Ⅱ」「午後Ⅰ・Ⅱ」は、それぞれ「科目A-1・A-2」「科目B-1・B-2」という呼称に整理されます。科目A群と科目B群は実施期間を分けて設定される一方、申込みの時点では両群をまとめて予約する運用になる点も実務上のポイントです。なお、出題範囲・出題数・試験時間・出題形式そのものに変更はないとされており、あくまで「実施方式」と「実施時期の柔軟化」が今回の変更の核心です。長年、日程が固定されていたことで受験計画を立てやすかった半面、会場や日程の都合で受験自体を断念せざるを得ない社員もいたはずです。CBT化と複数日程化は、こうした受験のハードルを下げる方向に働くと見てよいでしょうが、社内の学習・受験支援計画は前提から見直す必要があるでしょう。

試験制度の変更が示す、評価の仕組みそのものの転換

この動きを、ITストラテジストの視点で少し引いて眺めてみます。経済産業省は2026年、「DX銘柄2026」の選定にあたり、2025年に成立したAI法を踏まえたデジタル活用・AIトランスフォーメーションの取り組みを評価軸に組み込み、あわせてDX推進指標もデジタルガバナンス・コード3.0に沿って設問と成熟度レベルを見直しました。年に一度の固定日程で人材を測る国家試験がCBT化によって柔軟な評価へ移行するのと同じ時期に、企業のDX成熟度を測る指標側も継続的な見直しの対象になっている。これは偶然の一致というより、「評価の仕組みそのものを、実態の変化に追随させ続ける」という発想が、人材評価と組織評価の両方で同時に進んでいると捉えるべきではないでしょうか。ITストラテジストの本来の役割は、経営戦略とIT戦略を結びつけることですが、その土台となる「人材をどう測るか」「組織の成熟度をどう測るか」という評価基盤自体が更新期を迎えている点は、見過ごせない変化です。

IT部門・ITストラテジストが今取るべき対応

実務面でまず着手すべきは、社内の資格取得支援制度や研修計画の前提条件の棚卸しです。固定された年2回の試験日を前提に組んでいた学習スケジュールや、上司による受験勧奨のタイミングは、複数日程からの選択予約という新方式に合わせて再設計する必要があります。また、既存の午前Ⅰ試験免除制度など、移行に伴う経過措置の詳細は今後も公式発表が更新される可能性が高く、人事・教育担当部門と連携して最新情報を継続的に確認する体制を整えておくことが望ましいでしょう。加えて、今回のCBT化を単発の制度対応で終わらせず、DX推進指標の改訂やAI法対応の評価軸拡大といった動きとあわせて、「自社の人材育成計画・評価制度は、変化に追随できる設計になっているか」を点検する好機と捉えることをおすすめします。試験制度も企業の評価制度も、一度作って終わりではなく、継続的な見直しを前提とした設計に変わりつつあります。

まとめ

2026年度のITストラテジスト試験CBT化は、出題内容こそ変わらないものの、実施方式と時期の柔軟化という点で、これまでの受験・育成の常識を更新する変化です。そしてこの変化は、経済産業省によるDX推進指標の改訂やDX銘柄の評価軸見直しとも軌を一にしており、「人材と組織をどう継続的に評価し続けるか」という、より大きな問いにつながっています。皆さんの会社の人材育成計画や評価制度は、こうした変化に柔軟に追随できる設計になっているでしょうか。制度変更のニュースを単なる受験情報として消費するのではなく、自社の評価基盤を見直すきっかけとして活用してみてはいかがでしょうか。