皆さん、自行・自社が使っているシステムが「あと10年、誰が保守できるのか」を具体的に思い浮かべられますか。2026年1月、八十二銀行と長野銀行が合併して「八十二長野銀行」が発足し、長野銀行側の勘定系システムを八十二銀行側へ統合しました。同時に日本IBMとインテックの協力のもと、地域金融機関向けとしては初めてとなる「AI・データ統合基盤」の構築にも着手しています。地銀の勘定系システムをめぐる統合・共同化の動きは、いよいよ待ったなしの局面に入ったといえます。
IT投資の71%が「守り」に消える現実
金融庁が公表してきた金融機関のITガバナンスに関する調査では、地方銀行のIT投資のうち約71%が既存システムの保守・運用に充てられ、収益拡大につながる新規開発への投資は17%にとどまるという実態が繰り返し指摘されています。信用金庫にいたっては、保守運用が85%、新規開発はわずか7%です。人口減少による預金・貸出の伸び悩みで収益基盤が細る一方、勘定系という基幹システムの維持コストは下がらない。この構造的なジレンマこそが、地銀システム統合ラッシュの背景にあります。
すでに全国の地方銀行の約8割が、パッケージシステムの共同利用や共同センター方式など、何らかの形でシステム共同化に踏み込んでいるとされます。単独行としてフルスクラッチのメインフレームを維持し続けるコストと人材確保の難しさを考えれば、これは経営判断として自然な流れでしょう。加えて、勘定系を長年支えてきた世代のエンジニアが順次退職期を迎えており、「作った人にしか分からない」システムをそのまま延命させるリスクも、共同化を後押しする要因になっています。
「地域金融力強化プラン」が示す国の後押し
2025年12月、金融庁は「地域金融力強化プラン」を策定しました。ここでは、資本参加制度による自己資本の強化に加えて、合併やシステム統合にかかる費用を助成する枠組みが盛り込まれています。国としても、個々の金融機関が単独でシステムを抱え込む時代は終わりつつあると認識している表れです。
ただし、助成制度や共同化の枠組みが用意されても、実際に統合プロジェクトを動かすのは現場の人間です。八十二長野銀行のケースでは、年末年始の休業期間を使ったシステム停止・切替という綱渡りの日程管理、旧長野銀行側の業務プロセスをどこまで八十二銀行側の標準に合わせるかという業務仕様のすり合わせ、そして顧客への切替案内といった、地道な調整の積み重ねがありました。制度上の後押しがあるからといって、統合プロジェクトそのものの難易度が下がるわけではない、という点は見落とされがちです。
一方で、共同化には別のリスクも伴います。どの陣営・どのベンダーのシステムを選ぶかによって、その後10年、20年の投資の自由度が事実上固定されてしまう「ベンダーロックイン」の問題です。共同化によるコスト削減効果と、将来の技術選択の柔軟性をどう両立させるか。これは一行だけで判断すべき論点ではなく、経営レベルでの意思決定として扱う必要があります。
ITストラテジストが果たすべき「橋渡し役」
ここでITストラテジストに求められるのは、単なるベンダー選定や契約交渉ではありません。まず、経営層に対しては「システム統合は一時的なコストではなく、将来のIT人材不足リスクを下げるための投資である」という言語化と合意形成が必要です。次に、現場に対しては、標準化によって失われる独自業務プロセスをどこまで許容し、どこを競争力の源泉として残すかという線引きを、感情論ではなくデータに基づいて整理する役割が求められます。
さらに、統合後を見据えた視点も欠かせません。せっかく共同化してもゆくゆくは同じ「保守7割」の構造に陥っては意味がありません。統合によって浮いたIT予算を、次はどこに再投資するのか。八十二長野銀行が着手したAI・データ基盤のように、統合を「守りの効率化」で終わらせず「攻めのデータ活用」につなげる設計図を描けるかどうかが、地域金融機関のシステム部門、そしてそれを支えるITストラテジストの真価が問われるところです。
自社が金融業界でなくとも、レガシーシステムの維持コストと人材不足という構図は業界を問わず共通する課題です。皆さんの組織では、システムの「守り」と「攻め」の予算比率、意識したことはありますか。
参考情報
(当記事に関するご注意事項)本記事は、AIによる情報収集と文書作成の試行として作成しております。参照文献を添付するなど事実関係については留意しておりますが、記事内の情報についての事実確認は保証しかねますことをご了承願います。
