「今年こそITストラテジスト試験に挑戦しよう」――そう考えている方も多いのではないでしょうか。しかし2026年度の情報処理技術者試験は、これまでと様相が大きく異なります。長年ペーパー方式で実施されてきた応用情報技術者試験と、ITストラテジスト試験を含む8つの高度試験、そして情報処理安全確保支援士試験が、いよいよCBT(Computer Based Testing)方式へ移行するのです。しかもその先には、2027年度から試験区分そのものを組み替える「大再編」構想も控えています。皆さんの会社では、社員の資格取得支援制度や人材育成計画を、この一連の制度変化を踏まえて見直せているでしょうか。
CBT化で「変わらない」けれど「変わる」受験の作法
IPA(情報処理推進機構)は、CBT方式への移行によって各試験区分が問う知識・技能の範囲や、多肢選択式・記述式・論述式といった出題形式、出題数、試験時間には変更がないと明言しています。出題の本質は変わらない、というメッセージです。一方で、受験の実務は大きく変わります。これまで午前・午後として1日で完結していた試験が、CBT化によって「科目A」「科目B」という名称に変わるだけでなく、実施期間そのものが分離されます。前期試験の例では、科目A-1・A-2試験が2027年2月20日から3月2日、科目B試験が3月16日から3月28日という形で、両者の間に約2週間の間隔が空くスケジュールが示されています。さらに試験会場ではメモ用紙や筆記用具が配布されず、画面上のメモ機能・電卓機能を使う方式に変わるほか、CBT特有の受験枠の争奪戦も既に話題になっています。「出題は変わらないから今まで通りで大丈夫」と油断していると、申込・受験の段取りで思わぬ苦労をすることになりそうです。
さらに待ち受ける2027年度の「大再編」―8区分が3領域へ
CBT化がゴールではない、という点も見逃せません。経済産業省とIPAは2027年度以降、現行の応用情報技術者試験と8つの高度試験を「プロフェッショナルデジタルスキル試験(仮称)」として再編し、「マネジメント・監査」「データ・AI」「システム」という3つの領域に統合する案を示しています。ITストラテジスト試験やプロジェクトマネージャ試験、システム監査技術者試験は「マネジメント・監査」領域へ、データベーススペシャリスト試験は「データ・AI」領域へ、システムアーキテクト試験やネットワークスペシャリスト試験、エンベデッドシステムスペシャリスト試験は「システム」領域へと集約される見通しです。つまり2026年度の試験区分は、現行の名称で受験できる実質最後の機会になる可能性があります。「いずれ受けよう」と先送りにしてきた方にとっては、残された時間はそう長くないかもしれません。
ITストラテジストが今すぐ着手すべき3つの視点
この一連の変化に、事業会社側のITストラテジストはどう向き合えばよいのでしょうか。第一に、個人としての受験戦略の前倒し検討です。現行の試験区分での取得を急ぐのか、新制度を待って準備を整えるのか、部下や後進を含めて方針を早めに定めておきたいところです。第二に、資格取得支援制度・評価制度の点検です。資格手当や昇格要件が「ITストラテジスト試験」のような現行区分の名称に直接紐づいている場合、制度改定に合わせた見直しが必要になります。人事部門任せにせず、IT部門側から制度設計に働きかける姿勢が求められるでしょう。第三に、人材のスキル可視化の再設計です。新たに示された「マネジメント・監査」「データ・AI」「システム」という3領域の枠組みは、自社のスキルマップやジョブグレード設計を見直す際の切り口としても応用できます。国の試験制度再編を、自社の人材ポートフォリオを棚卸しする好機と捉えられるかどうかが分かれ目になりそうです。
情報処理技術者試験のCBT化と2027年度の大再編は、単なる「試験の手続きが変わる話」ではありません。国が描く技術者像・スキル区分が変わるということは、企業が資格をどう評価し、どう人材育成に組み込むかという設計そのものを問い直す機会でもあります。制度変更の波を静観するのか、それとも自社の人材戦略を見直すきっかけとして先取りするのか。皆さんの会社は、どちらの立場を選びますか。
情報処理技術者試験の合格体験記や参考書選びについては、こちらの試験対策ページも参考にしてください。
参考情報
- 令和8年度試験情報 – IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
- 応用情報技術者試験、高度試験及び情報処理安全確保支援士試験におけるCBT方式での実施について – IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
- IPAの情報処理技術者試験が2026年度に全てCBT化、合格率が上向く2つの根拠 – 日経クロステック
- 【2027年度からIPA試験が大変革?】情報処理技術者試験の再編と「登録セキスペ」のゆくえ – サイバーセキュリティラボ
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