「円建てステーブルコイン」実用化元年 ― JPYC発行拡大と証券決済実証にITストラテジストが備えるべき決済基盤の設計力

日本円建てステーブルコインJPYCの発行拡大と、証券決済への活用に向けた実証実験を手がかりに、ITストラテジストが今から備えておくべき会計・税務、セキュリティ、基幹システム連携という3つの論点を解説します。

「決済手段としての実用フェーズに入った」——2026年9月、日本円建てステーブルコイン「JPYC」の累計発行額が100億円を突破したというニュースは、暗号資産に馴染みの薄いIT部門の方にとっても静かな驚きだったのではないでしょうか。ステーブルコインというと投機的な暗号資産の一種というイメージが先行しがちですが、実態は法定通貨と価値が連動する「電子決済手段」であり、企業間決済や証券決済の実務に組み込まれ始めています。皆さんの会社の決済・会計システムは、この新しい決済レールを受け入れる準備ができているでしょうか。

円建てステーブルコイン、法制度から実装フェーズへ

ステーブルコインを巡る法整備は、2023年6月施行の改正資金決済法で大きな節目を迎えました。法定通貨の価値に連動するステーブルコインは「電子決済手段」として位置づけられ、その発行主体は銀行・信託会社・登録を受けた資金移動業者に限定されました。この枠組みのもとで2025年10月、JPYC株式会社が資金移動業者として登録を受け、日本で初めて円建てステーブルコイン「JPYC」の正式発行が始まりました。そして2026年9月18日、発行・償還プラットフォーム「JPYC EX」経由の累計発行額が100億円を突破したと発表されています。さらに2026年5月には日本ブロックチェーン基盤が信託型の円建てステーブルコイン「EJPY」の発行方針を発表するなど、発行主体の多様化も進んでいます。制度整備から2年強で、ステーブルコインは「議論の対象」から「実装を検討する対象」へと立場を変えつつあるのです。

基幹システムとの接続点で何が変わるのか

実務への波及を象徴するのが、2026年2月に野村証券・大和証券と3メガバンク(三菱UFJ・三井住友・みずほ)が発表した、ステーブルコインを用いた有価証券決済の実証実験です。金融庁がこの取り組みを支援事業として認定したことも注目に値します。ステーブルコインとセキュリティトークンを交換する仕組みが実用化されれば、現行の証券決済にかかる日数を短縮し、手作業による事務ミスや照合コストを削減できる可能性があります。実証は証券決済に限りません。ローソンなど小売現場での店頭決済実証や、企業間の請求・支払いへの組み込み、そして海外送金インフラとしての活用も並行して進んでいます。数十円程度の手数料で数分のうちに着金するという特性は、従来の国際送金網とは異なる設計思想を持つ決済チャネルが、既存の会計システムやERPの外側に生まれつつあることを意味します。IT部門にとっては、この新しいチャネルをどう既存の基幹システムに接続するかが、遠くない将来の検討課題になってきます。

ITストラテジストが今整理すべき3つの視点

第一に、会計・税務処理の未成熟さです。ある調査では、ステーブルコイン導入における懸念として「規制の不確実性」に次いで「会計処理・税務対応の明確化」が挙げられています。仕訳ルールや税務上の取り扱いが流動的な段階でシステムに組み込むと、後の制度改定で改修コストがかさむ恐れがあります。第二に、秘密鍵管理を中心としたセキュリティ設計です。ブロックチェーン上の資産は秘密鍵の管理がそのまま資産保全に直結するため、既存の権限管理・内部統制の考え方をそのまま流用できない場面が出てきます。第三に、既存の決済・会計基盤との統合アーキテクチャです。API連携なのか、専用ウォレット経由のバッチ処理なのか、どの粒度でリアルタイム性を持たせるのか——この設計判断が後々の拡張性を左右します。加えて、発行体や交換基盤となるプラットフォーマーが今後どこまで乱立し、どこが淘汰されるかも見通しにくく、ベンダーロックインのリスクを見極める視点も欠かせません。皆さんの組織では、こうした論点についてまだ「様子見」で止まっていないでしょうか。制度と実証が先行する今だからこそ、要件整理だけでも始めておく価値があります。

まとめ

円建てステーブルコインは、法制度の整備、発行体の登場、大手金融機関による実証実験という3つの歯車がそろい、投機の対象から実務インフラへと軸足を移しつつあります。すべての企業が今すぐ導入を検討すべき段階ではありませんが、決済・会計システムを預かるITストラテジストとしては、制度動向を継続的に追いながら、自社の決済フローのどこに接続点が生まれ得るかを整理し、経理・法務部門を巻き込んだ小さな検討会だけでも始めておくことが、来るべき変化への備えになるはずです。

参考情報

(当記事に関するご注意事項)本記事は、AIによる情報収集と文書作成の試行として作成しております。参照文献を添付するなど事実関係については留意しておりますが、記事内の情報についての事実確認は保証しかねますことをご了承願います。