資料を作っている途中で、上司からこんなことを言われた経験はないでしょうか。
「完成してなくていいから、一度見せて」
ところが作る側としては、
「まだ30%くらいしかできていない」
「こんな状態で見せたら、仕事ができないと思われそう」
「もう少しちゃんとしてから見せたい」
と思ってしまいます。
私自身、若い頃はそうでした。
しかし、プロジェクトマネージャーや管理する側を経験して、考え方が変わりました。
30%しかできていないから見せられないのではなく、30%だからこそ見せた方がいい。
資料作成や成果物レビューでは、私は「30%・70%・100%」という考え方をおすすめします。
なぜ「完成してからレビュー」では遅いのか
資料作成で怖いのは、誤字やレイアウトの乱れではありません。
もっと大きな問題は、
「そもそも方向が違っていること」
です。
例えば、顧客へのシステム提案資料を作るとします。
作成者は、
「このシステムでは○○ができます」
「こんな機能があります」
と、システムの機能を一生懸命説明するかもしれません。
ところが上司が期待していたのは、
「お客様が抱えている○○という課題を、このシステムで解決できます」
という提案だったとします。
この場合、文章やデザインをいくら磨いても問題は解決しません。
資料の視点そのものが違うからです。
完成度を30%から100%まで高めたとしても、方向が間違っていれば、その70%分の作業が手戻りになってしまいます。
実際に「ほぼ全部やり直し」になった
これは私自身が経験したことです。
若い頃、顧客向けのシステム提案資料を作ったことがあります。
上司からは、
「完成度が低くてもいいから持ってきて」
と言われていました。
しかし私は、完成度の低い資料を見せるのが嫌でした。
「こんな状態で見せたら、能力が低いと思われるのではないか」
そんな気持ちもあったと思います。
そこで、かなり完成度を上げてから上司に見せました。
ところが返ってきたのは、
「視点が違う」
という指摘でした。
私は「システムで何ができるか」を説明していました。
上司が求めていたのは「顧客の課題をどう解決するか」でした。
結果、資料はほぼ作り直しです。
この経験から学んだのは、
完成度より先に、方向を確認する必要がある
ということでした。
30%・70%・100%で確認するものを変える
では、途中でレビューするとき、何を確認すればよいのでしょうか。
ポイントは、30%、70%、100%でレビューの目的を変えることです。
| 完成度 | レビューの目的 | 主に確認すること |
|---|---|---|
| 30% | 方向確認 | 目的、対象者、視点、構成、伝えたいこと |
| 70% | 内容確認 | 論理、情報の過不足、説明の流れ、表現 |
| 100% | 最終確認 | 誤字脱字、数値、レイアウト、体裁 |
30%:方向を見る
30%の段階では、資料をきれいに作る必要はありません。
PowerPointなら、タイトルと箇条書きだけでも構いません。
この段階で確認したいのは、
「誰に見せるのか」
「相手に何を理解してほしいのか」
「その結果、何を判断・行動してほしいのか」
「どんな構成で説明するのか」
といった資料の骨格です。
ここで方向が違っていれば、簡単に修正できます。
70%:中身を見る
方向性が合っていることを確認したら、内容を作り込みます。
70%では、
「説明の順番は分かりやすいか」
「根拠は十分か」
「必要な情報が抜けていないか」
「逆に、不要な情報が多すぎないか」
などを確認します。
この段階なら、ページの追加や削除、構成変更もまだ可能です。
100%:仕上げを見る
最後に確認するのが完成度です。
誤字脱字、数字、表記の統一、フォント、図表、レイアウトなどを確認します。
ここまで来て初めて、
「きれいに仕上げる」
ことが重要になります。
30%レビューは「雑な資料を見せる」ことではない
ここは誤解しやすいところです。
30%レビューとは、
何も考えていない資料を、とりあえず上司に投げることではありません。
最低限、
目的・対象者・方向性・大まかな構成
は考えておく必要があります。
細部は作っていない。
でも、考え方は見える。
これが30%レビューです。
つまり、
30%とは「思考が30%」なのではなく、「作り込みが30%」
と考えると分かりやすいでしょう。
上司側にも注意点がある
30%レビューを機能させるには、見る側にも工夫が必要です。
部下が30%の資料を持ってきたときに、
「フォントが揃っていない」
「ここの文章がおかしい」
「図がきれいじゃない」
と細部ばかり指摘すると、部下は次から完成するまで持ってこなくなります。
30%なら、30%で確認すべきことを見る。
つまり、
「この方向で残り70%を作って大丈夫か」
を判断するのがレビューする側の役割です。
手戻りを減らすのは「早く作ること」ではない
仕事の効率化というと、
「資料作成を速くする」
「AIで文章を作る」
「PowerPointを自動生成する」
といった方法に目が向きがちです。
もちろん、それらも有効です。
しかし、どれだけ高速に資料を作れるようになっても、方向が違っていたら高速で間違った資料を作るだけです。
仕事全体で考えるなら、
作業を速くすることより、間違った作業を早く止めること
の方が大きな効果を生む場合があります。
そのためのシンプルな仕組みが、
30% → 70% → 100%
のレビューです。
次に資料を作るとき、
「もう少し完成してから見せよう」
と思ったら、一度考えてみてください。
今確認してほしいのは、完成度でしょうか。
それとも、方向でしょうか。
方向を確認したいのであれば、
30%だからこそ、見せるタイミングです。

