正しいことを言っても人は動かない。「賛成」と「行動」は別だった
「このやり方の方が効率的です」
そう説明して、相手も「その通りだね」と賛成してくれた。
それなのに、なぜか何も変わらない。
仕事をしていると、そんな経験はないでしょうか。
私もエンジニアになったばかりの頃、不思議に思ったことがありました。
部品を共有すれば効率が良くなるのに
新人エンジニアだった頃のことです。
誰かが作ったソフトウェアの部品を、みんなで共有すればいいのに、と考えていました。
似たようなものを、それぞれが一から作るより、一度作ったものを再利用した方が効率がいい。
そこで先輩たちに、
「こういう部品って、みんなで共有した方が効率的じゃないですか?」
と話してみました。
反応は悪くありませんでした。
「それはそうだね」
「いい観点だね」
むしろ褒めてもらいました。
新人だった私は、自分の意見が認められたと思いました。
ところが、その後も何も変わりませんでした。
「正しい」のに、なぜやらない?
みんな賛成している。
効率が良くなることも分かっている。
それなのに、誰も共有しようとしない。
ずいぶん経ってから、理由を聞いてみました。
返ってきた答えは、とても単純でした。
「面倒くさいから」
当時の私は驚きました。
「そんな理由?」
正直に言えば、「そういう大人がダメな仕事をしているんじゃないか」とさえ思っていました。
でも、それから十年以上仕事をして、いろいろな立場を経験すると、少し違って見えるようになりました。
先輩には、先輩の仕事があった
先輩たちには、それぞれ自分の仕事があります。
そして、その仕事には期限があります。
今日終わらせなければならない仕事を抱えている人に、
「他の人が何を作っているか確認してください」
「自分が作ったものが他の人にも使えないか考えてください」
と言っても、それは新しい仕事を増やすことになります。
会社全体で見れば、部品を共有した方が効率はいい。
だから、新人だった私の意見は間違っていなかったと思います。
先輩たちが「いい観点だ」と言ったのも、本心だったのでしょう。
でも、
組織にとって正しいことと、一人ひとりが今やるべきことは、必ずしも一致しません。
そこに当時の私は気づいていませんでした。
「賛成」と「行動」は違う
これは部品共有だけの話ではありません。
仕事では、
「この方が効率的です」
「この方法に変えるべきです」
「この情報はみんなで共有しましょう」
という正論がたくさん出てきます。
そして相手も、
「その通りですね」
と賛成する。
でも、何も変わらない。
なぜなら、
正しい意見に賛成することと、実際に行動することは別だからです。
正論を説明できたところで、仕事はまだ半分なのかもしれません。
人を動かすなら「仕組み」を考える
では、どうすれば人は動くのでしょうか。
今の私は、個人の意識だけに頼るのではなく、「仕組みを変えること」が大切なのだと思っています。
「共有してください」と繰り返しお願いするより、自然に共有される場所を作る。
共有するための手間を減らす。
必要な情報を簡単に探せるようにする。
普通に仕事をしていれば、その成果が他の人にも利用できるようにする。
つまり、
「正しいからやってください」ではなく、「そうする方が自然」という環境を作る。
人を動かすというのは、説得の技術だけではないのだと思います。
正しいことを言うところで、仕事を終わらせない
新人だった頃の私は、
「正しいことを言えば、人は動く」
と思っていました。
でも、その人にはその人の仕事がある。
その人にはその人の期限がある。
だから今なら、若い頃の自分にこう言います。
「正しいことを言うところで、仕事を終わらせるな。」
相手が動かないことを責めるのではなく、
「なぜ動かないのだろう?」
と考える。
そして、
「どうすれば、人が自然に動けるのか。」
そこまで考えて仕組みにする。
それも、仕事の一つなのだと思います。
経験知ノート
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